未承認の医療機器を用いますが、血圧測定を行うのみで、その結果によって治療を変更することはありません。このような研究は、医学系研究倫理指針における「介入」研究にはあたらないと考えてよいですか。
A. 通常の既存機器での血圧測定とともに未承認機器でも測定を行うだけであれば、観察研究であって、介入研究ではないと判断するのがよいでしょう。
旧指針を統合した医学系研究倫理指針では、「介入」の定義は、より疫学研究の方法論に即したものに修正されました(参:疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直しに係る合同会議議事録 第4回、第8回等)。しかし、まだ曖昧さが残っています。
介入 研究目的で、人の健康に関する様々な事象に影響を与える要因…の有無又は程度を制御する行為(通常の診療を超える医療行為であって、研究目的で実施するものを含む。)をいう。(p2. 第1章第2(3))通常の状態で血圧測定を行うだけであれば、被験者の健康関連事象に影響を与える要因を制御するものとはいえません。なお、「通常の診療を超える医療行為」には未承認や適応外の医薬品・医療機器の使用が含まれますが(ガイダンス p9)、この定義を見る限りは、そうした研究を含めて、健康関連事象への影響要因を制御する行為が「介入」であると読めます。
ところが、ガイダンスには一部改訂(平成27年3月31日)で次の追記がされました。
「通常の診療を超える医療行為であって、研究目的で実施するもの」に関しては、臨床研究倫理指針において介入と規定していたため、この指針においても引き続き、「介入」に該当する旨を明確化するため示しているものである。(p9)この追記の意味は、未承認や適応外の体外診断薬・機器を用いる観察研究は、旧臨床研究倫理指針の定義を引き継いで「介入」として扱うというものです。(それにより、倫理審査は迅速審査ではなく本審査、また臨床研究登録が指針において求められます。)しかし、このように旧指針を引き継ぐのは、「介入」の定義の分かりにくさと混乱を残すだけではないでしょうか。
そこで、研究者と倫理審査委員会においては、指針の本文に立ち返り、このような研究は「介入」にはあたらないと判断することをお勧めします。
なお、通常の状態で血圧測定をするのではなく、冷水に手を浸して血圧測定する場合は、介入研究にあたります。
最後の一文の理由についてご質問をいただきました。冷水に手を浸して血圧測定することが介入研究にあたるのは、血圧に影響を与える要因を制御して、血圧の変化を見ているからです。
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